はじめに
がんの遺伝的素因とは、主に患者様のご両親より受け継がれる遺伝子変異のことであり、がんの発症確率を増加させます。特定の変異の中にも、がん発症リスクを著しく増加させるものもあれば、影響力が小さいものもあります。例えば、がん素因のある遺伝子によるがんは、乳がんおよび結腸直腸がんの3%〜5%、卵巣がんの15%がそれにあたります。
患者様は、エクソームシーケンシング検査を受けることで、ご自身の持つさまざまながんの発症リスクの大きさを判定できます。がん発症リスクの大きさが分かることで、経過観察や、予防的な投薬または予防的な手術により、発症リスクをマネージメントできるようになります。
がん患者様にとって、がん素因のある遺伝子における家族性のがんの(生殖系列)変異を判定すれば、有効な治療方針の提案につながるかもしれません。例えば、腫瘍専門医は結腸直腸がんおよびリンチ症候群の患者様の治療に対する結腸切除、BRCA1/2に変異を持つ卵巣がん患者様の治療にはPARP阻害剤投与、TP53遺伝子に変異のある乳がん患者様の治療には放射線治療を回避する、などの方針を検討できるようになります。(詳細は以下のASCO Webリソースを参照してください。)
Baylor Genetics社。
この検査はBaylor医科大学と提携している遺伝子検査ラボであるBaylor Genetics社と共同で開発されました。同社は米国で最も歴史が古く、また最大の遺伝子検査および医療機関の1つであり、がんスクリーニングおよび検査をリードしています 。
Rainbow High-Risk Cancer™ Test
スリーインワンの検査です
この検査は、臨床検査と多発性のがんスクリーニングを同時に行うことができます。
医学的検査。
患者様の家族歴または症状に基づいて、Baylorチームが患者様のエクソームに含まれる22,000超の遺伝子の網羅的な分析を行い、病因となる遺伝的変異を特定いたします。臨床解釈においては、病原性のある、または病原性のある可能性の高い変異なのか、あるいは臨床的意義の不確定な変異なのかに注目します。
スクリーニング検査。
加えて、この検査は、乳がん、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がんおよび膵臓がんなど20のタイプのがんを包含する118の遺伝子の変異を同時にスクリーニングいたします。
ファーマコゲノミクス検査。
OneOme RightMed テストにより、40以上のがん治療薬を含む340以上の薬に対する薬剤反応のプロファイルを提供いたします。
スクリーニングの対象となるがんの種類
1.乳房 2.卵巣 3.結腸直腸
4.肺 5.前立腺
6.子宮 7.胃
8.膵臓 9.甲状腺
10.メラノーマ 11.腎臓
12.尿路 13.中枢神経系および末梢神経系がん
14.パラがんグリオーマ
15.褐色細胞腫
16.脳腫瘍 17.肉腫
18.神経内分泌腺
19.白血病
20.骨髄異形成症候群
検査内容
まず、弊社認定の診療所に行かれ、医師の診断を受けていただきます。そして、担当医師が検査を発注します。臨床全エクソームシーケンシング検査を行い、これは100Xから150Xの冗長度のシーケンシングを、CAP (College of AmericanPathologists;米国病理学会)認証またはCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendment;臨床検査改善修正法案)認定の検査機関で実施します。遺伝子データに対し、Baylor Genetics社でACMG(American College of Medical Genetics and Genomics:米国臨床遺伝・ゲノム学会)ガイドラインに基づいて解析と臨床的な解釈が行われ、解析レポートはBaylor Genetics社から認定された主任医師により発行されます。
ACMGの偶発的所見に関するレポートオプションについて。
患者様は、ACMGの偶発的所見についてのレポートを受け取るかどうか選択することができます。ACMGの偶発的所見には、心筋症や不整脈その他の項目を含みます。
全エクソームシーケンシング検査は、もともとの検査対象となっている臨床症状とは無関係な遺伝子変異を検出する可能性があります(偶発的所見)。これらの「二次的」な所見を知ることは、もともとの臨床症状とは別に、ご自身も医師も想定していなかった健康リスクを把握し、マネージメントできる利点があります。ACMGは59の遺伝子の変異についてレポートするガイドラインを制定しています。これらの遺伝子は、対処可能または予防可能といった医学的な実行可能性があると認定されているものです。
- OneOme RightMed Test が含まれています
- 340以上の薬について患者様個別の薬剤反応がわかります
- 40以上のがん治療薬を含む
来診時にあなたのDNAサンプル採取は、医師がOneOme RightMed®ファーマコゲノミクス検査の綿棒で、口内を軽く擦る「頬スワブ」によって行われます。サンプルは、OneOme社のCAP認証を満し、さらにCLIA認定された臨床検査ラボに送られます。検査、解析、臨床検査結果の発行は、OneOme社の臨床チームによって行われます。
この遺伝子検査が適している方
もし、ご自身やご家族にがんに罹患しやすい遺伝子の変異が見つかったとしても、それがすなわち、がんの発症を意味するとは限りません。米国国立がん研究所によると、次のいずれかの条件が当てはまる場合は、Rainbow High-Risk Cancer testをお勧めいたします
すでにがん症状がある
遺伝性のがんリスクを示唆する個人または家族歴がある
自分と同じタイプのがんを持つ複数の近親者がいる
遺伝性がん症候群に関連することが知られている特定の良性皮膚発育または骨格異常などの先天性欠損がある
腎臓または両胸部のような一対の臓器で発症したがんである
いくつかの異なるタイプのがんがそれぞれ原発として発生した
若年でのがんの罹患
男性の乳がんなどの特定のがんのタイプ
参考文献
- Diagnostic yield of clinical tumor and germline whole-exome sequencing for children with solid tumors. JAMA Oncol. 2016;2(5):616-624.
- Identification of cancer predisposition variants in apparently healthy individuals using a next-generation sequencing-based family genomics approach. Human Genomics (2015) 9:12
- Genetic testing for hereditary cancer predisposition: BRCA1/2, Lynch syndrome, and beyond. Gynecol Oncol. 2016 March; 140(3): 565–574.
- BRCA1- and BRCA2-Associated Hereditary Breast and Ovarian Cancer. GeneReviews® - NCBI Bookshelf. Last Update: December 15, 2016.
- Hereditary Breast Cancer in the Han Chinese Population. J Epidemiol 2013;23(2):75-84
Webリソース